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長野地方裁判所 昭和32年(ワ)35号 判決

原告

右代表者法務大臣

唐沢俊樹

左指定代理人検事

河津圭一

法務事務官 那須輝雄

大蔵事務官 内田稔

同 関田幸一

長野市大字長野桜枝町九百十五番地

被告

蟻川里う

右訴訟代理人弁護士

水津静吉

右当事者間の昭和三十二年(ワ)第三五号所有権移転登記手続請求事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

被告は訴外長野県缶詰興業株式会社に対し別紙目録記載の建物について所有権移転登記手続をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告指定代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として「原告は訴外長野県缶詰興業株式会社に対して昭和二十六年度分物品税等合計千三百二十八万二千五百円の租税債権を有するが、右訴外会社は昭和二十四年八月二十五日訴外信濃恵産株式会社から別紙目録記載の建物を買受けその所有権を取得しながら、被告と通謀の上同年十月八日右信濃恵産株式会社をして被告に対し虚偽の所有権移転登記手続をさせた。よつて右登記は無効であり右建物の所有者は被告でなく長野県缶詰興業株式会社であるから被告は同会社に対して右建物について所有権移転登記手続をする義務があるので、原告は右会社に代位してその義務の履行を求めるため本訴請求に及んだ」と陳述し、立証として、甲第一号証の一、二、第二乃至第四号証を提出し、証人林岩彦及び同後藤房之助の各訊問を求めた。

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、「原告主張の事実中、原告が訴外長野県缶詰興業株式会社に対して原告主張の租税債権を有すること、別紙目録記載の建物について昭和二十四年十月八日訴外信濃恵産株式会社から被告に対する所有権移転登記がなされたこと及び右建物が被告の所有でなく右登記が虚偽のもので無効であることは認めるが、右建物が訴外長野県缶詰興業株式会社が買受けたものであり同会社の所有であるかどうかは不知。被告が右建物を被告名義に登記したのは訴外山口慶造に依頼されたからであつて、被告としては真の所有者が判らないため、後日其の所有者から損害賠償の請求を受けることを虞れると共に前述の登記以後の右建物に対する公租公課並びに敷地の地代の負担者が決定しないために本件登記の履行に応じなかつたのである」と述べ、甲号各証の成立を認めた。

理由

原告が訴外長野県缶詰興業株式会社に対して昭和二十六年度分物品税等合計千三百二十八万二千五百円の租税債権を有することは当事者間に争いなく、別紙目録記載の建物について昭和二十四年十月八日訴外信濃恵産株式会社から被告に対する所有権移転登記がなされたが、右建物が被告の所有でなく右登記が虚偽のもので無効であることも亦被告の認めるところであり、成立に争いない甲第三及び第四号証証人林岩彦及び同後藤房之助の各証言によれば、右建物は昭和二十四年七、八月頃信濃恵産株式会社から長野県缶詰興業株式会社に売渡され同会社の所有となつたものであることが認められる。よつて被告は右長野県缶詰興業株式会社に対して右建物について所有権移転登記手続をする義務があることは明かであり、右会社に代位して被告に対してその義務の履行を求める原告の請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 今村三郎)

目録

科郡生町大字鋳物師屋字側淵百四拾八番ノ弐、百四拾八番壱ノ弐、百四拾八番ノ六、百四拾九番、百五拾番、百五拾壱番、百五拾七番敷地

家屋番号鋳物師屋拾壱番ノ弐

一、木造瓦葺平屋建工場       壱棟

建坪  六拾参坪七合五勺

附属建物

木造瓦葺平屋建工場       壱棟

建坪  五拾七坪七合五勺

木造瓦葺平屋建工場       壱棟

建坪  五拾七坪七合五勺

木造スレート葺平屋建工場    壱棟

建坪  六拾六坪

木造スレート葺平屋建工場    壱棟

建坪  四拾壱坪弐合五勺

土蔵造瓦葺弐階建倉庫      壱棟

建坪  拾五坪

弐階坪拾五坪

土蔵造瓦葺弐階建倉庫      壱棟

建坪  拾坪

弐階坪 拾坪

土蔵造瓦葺平屋建倉庫      壱棟

建坪  拾五坪

木造瓦葺平屋建倉庫       壱棟

建坪  五坪

木造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建倉庫 壱棟

建坪  拾七坪五合

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